【熊本発】Lib Workの3Dプリンター住宅!万博の先を行く“現実的な近未来の住まい”とは?

熊本県山鹿市にあるLib Workの3Dプリンター住宅モデルハウス。未来の住まいを提案する円筒型の建築物が青空の下に立っている。 大阪・関西万博
Lib Workが熊本県山鹿市に建設した3Dプリンター住宅のモデルハウス。積層構造が特徴的な外観が印象的。

2025年の大阪・関西万博では、未来の食や医療、エネルギーなど多岐にわたる最先端技術が披露されています。その中で特に私が印象的だったのは、3Dプリンターによる建築分野の活用でした。ユニークなフォルムのパビリオンや、会場内に設置されたベンチやトイレといった設備にも、積層痕がそのまま残された3Dプリントならではの質感が見られ、「建物」そのものに新しい表現が生まれているように感じました。

そんな万博の熱が冷めやらぬなか、九州エリアで実際に見に行くことができる場所がないかと調べていたら熊本県山鹿市に“日本初の常設モデルハウス”としてすでに存在していました。それが、Lib Work社による3Dプリンター住宅です。場所は私の住む玉名市からも車で約30分ほどの隣町にあり、灯台下暗し過ぎる状況に。他県からは新玉名駅からシェアカーを使えばアクセスもしやすく、実際に足を運ぶにはちょうどいい距離です。

このLib Workの取り組みは、万博で見た半年で取り壊すようなコンセプトモデルではなく「近未来の建築」が、もはや“未来”ではなく“現実”になりつつあることを強く感じさせてくれました。

3Dプリンターで家を建てるという発想

Lib Workの住宅は、骨組みだけでなく壁面そのものを3Dプリンターで積層して作り上げるという手法を採用しています。従来の建築では、人の手と道具でブロックを積み上げたり、コンクリートを流し込んだりする工程が不可欠でしたが、この3Dプリンター住宅ではCADで設計されたデータをもとに、アームが自動でセメント系の素材を積み上げていくため、工期の大幅短縮が実現されています。

3Dプリンター建築のパイオニアとして注目されているLib Work社は、公式プレスリリースでもこの住宅の詳細を公開しています。

現地のモデルハウスは、一見するとまるで“砂で作った未来の遺跡”のような印象。グレーの外壁に細かく刻まれた層の跡が美しく、どこか彫刻のような存在感を放っています。雨風に耐える強度はもちろん、断熱性能や耐震性も十分に配慮されており、実際の居住に耐える水準に達しています。

内装も“未来”を感じさせる設計

内装に関しては、万博の会場で見たような“SF映画風”ではなく、むしろミニマルで機能的な印象を受けました。天井高がある空間設計に加え、曲線を描く壁が柔らかい印象を演出。自然光が差し込む窓の配置などにも工夫が感じられ、「3Dプリンター=無機質」という先入観が良い意味で裏切られました。

そして特筆すべきは、内装の一部もプリントで成形されている点です。棚やベンチ、間仕切りなどを建築の一部として一体成形できるため、空間の統一感が高まり、造作家具に近い魅力がありました。

万博との接点と地方からの展望

私がこのモデルハウスに強く魅力を感じた理由は、万博で見た3Dプリント建築との共通性にあります。会場内で見たトイレやベンチは、素材感こそ武骨ですが、逆にそれが“工業デザイン”としての魅力を放っていました。Lib Workのモデルハウスでも、あえて積層痕を隠さない設計が採用されており、「手間をかけて滑らかに仕上げるより、ありのままの造形美を見せる」という思想を感じます。

万博会場で見た“積層痕”をそのまま活かしたベンチや構造物も、日経クロステックが詳しく解説しています。

さらに、これは東京や大阪のような大都市ではなく、熊本の山鹿という地方で実現されている点にも大きな意味があります。3Dプリンター住宅というと、つい未来の都市像を想像してしまいますが、実際には過疎地域や空き家問題への解決策として地方でこそ活きる技術でもあるのです。

大阪万博・建築デザインに関する公式報告書(CDCレポート)
 https://www.expo2025.or.jp/cdc-report/cdc-20250312-02/

今後の可能性と課題

現状では、法規制や施工体制の整備、資材の安定供給など課題も多いのは事実です。特に日本は建築基準法が厳しく、新しい工法を採用するには相応の認証や耐久試験が求められます。しかし、実物のモデルハウスが常設され、実際に触れて・見て・感じられる段階にまで来ているというのは大きな前進です。

Lib Workの挑戦がこの先どこまで広がるかは未知数ですが、地域の建築会社が3Dプリンター技術を取り入れ、持続可能な住宅供給の新しい道を模索しているという事実は、他の地方都市にも大きなヒントを与えるはずです

まとめ:未来の住まいは、すでに始まっている

今回紹介したLib Workの3Dプリンター住宅は、決して“未来の夢物語”ではありません。技術はすでに実装段階にあり、熊本という地方都市で日常の風景の一部として存在しています。

私自身、実際にこのモデルハウスを見に行く予定で、新玉名駅からシェアカーでアクセスするつもりです。記事ではその体験レポートも今後追記していく予定ですので、ご興味ある方はぜひ続報を楽しみにしていただけたらと思います。

大阪万博で見た非日常の景色が、熊本で“現実の住宅”として静かに根を下ろしている──それはとても希望に満ちた風景でした。

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